米外交占う「抑制」と「優先」=政権内に関与拒否・対中強硬―トランプ氏、戦略定まらず 2025年07月19日 14時21分

トランプ米大統領=7月1日、ワシントン(AFP時事)
トランプ米大統領=7月1日、ワシントン(AFP時事)

 【ワシントン時事】第2次トランプ米政権では、自国の利益を最優先する一方で軍事介入を極力控える「抑制主義者」と、中国との競争に国力を集中させたい「優先主義者」の閣僚や高官が対外政策を取り仕切っている。だが、「予測不能」なトランプ大統領の下で戦略が定まらないまま、一貫性を欠く政策判断が続いている。
 ◇軍事介入に拒否感
 「欧州を再び救済するのが嫌なだけだ」。3月、政権幹部が通信アプリ「シグナル」で軍事作戦を共有し、米誌記者に誤送信したことが発覚した際、報じられたアプリ内でのバンス副大統領の発言に注目が集まった。
 紅海周辺で商船攻撃を続けるイエメンの親イラン武装組織フーシ派を狙った軍事行動に不満を示す内容で、紅海に通じるスエズ運河を経由する貿易量は欧州が米国を大きく上回ると強調。「作戦が必要な理由を大衆が理解しない恐れがある」として、軍事介入に疑問を呈した。
 抑制主義者は、アフガニスタンやイラクで長年続いた戦争が国力を疲弊させたとして、対外関与に慎重な姿勢を取る。国際協調や同盟関係を軽視する傾向も強く、バンス氏は抑制主義者の代表格と見なされている。
 ◇インド太平洋優先
 これに対し、優先主義者として名前が挙がるのは、ルビオ国務長官や国防総省ナンバー3のコルビー国防次官だ。欧州や中東への関与を減らし、インド太平洋で地域覇権を追い求める中国との競争に資源を集中すべきだと訴える。対中強硬姿勢が特徴だ。
 コルビー氏は第1次政権の2018年に発表された国家防衛戦略の策定責任者。同戦略では中国やロシアとの「大国間競争」が最優先課題に据えられている。在韓米軍の役割の重点を、北朝鮮の脅威への対応から中国抑止に移すべきだと主張したこともあり、最近では台湾有事の際の役割を明確にするよう日豪国防当局者に要請したと報じられた。
 ◇予測不能のトランプ氏
 フーシ派攻撃、イラン核施設空爆、対ウクライナ兵器供与再開。トランプ氏はこの半年、対外関与に抑制的だった態度を改め、軍事介入に踏み切る決断を重ねた。
 一方で、対外政策の司令塔とされる国家安全保障会議(NSC)の規模縮小を通じ、優先主義者の高官を放逐。中国の習近平国家主席を「非常に尊敬している」と語っており、中国と貿易でディール(取引)を目指しているとの見方も根強い。
 シンクタンク「欧州外交問題評議会」のマイダ・ルガ上級政策研究員は、トランプ氏が「特定のイデオロギーを採用し、戦略を立てることに抵抗がある」と指摘。政権から矛盾したメッセージが発信され、トランプ外交の振れ幅を大きくしていると分析する。 

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