トランプ政権半年・識者談話 2025年07月19日 14時25分

西山隆行 成蹊大教授(本人提供)
西山隆行 成蹊大教授(本人提供)

 ◇公約実行も支持離れ
 西山隆行・成蹊大教授(米国政治)の話 2期目のトランプ米大統領は保護主義的な関税政策や不法移民の取り締まり強化など、大統領選で掲げた公約は着実に実行しているが、インフレ抑制など期待されていた結果を実現できていない。継続的な支持率低下は、無党派層を中心に有権者が不満を抱き始めている証左だ。あらゆる問題を前任者のバイデン氏のせいにする手法も徐々に効かなくなる。ただ、岩盤支持層からの支持はなかなか変わらない。
 1期目と比較しても、大統領が自分の考えで政策を決定する傾向が強まっている。共和党が議会両院で過半数を占めるが、造反する議員もおり法案を通すのは難しい。大統領令の乱発は今後も止まらないだろう。本来歯止めをかけるはずの司法府も機能していない。専門家による助言を排除し、個人が強大な権限を自由に行使する危険な前例をつくっている。
 「米国第一主義」を掲げるが一貫した外交指針は見えてこない。米国の国際的な存在感は長期的に低下し、各国は外交の多角化を迫られている。
 今後の注目点は、2026年11月の中間選挙で再選を目指さない議員が共和党内でどれだけ出てくるかだ。これらの議員とイーロン・マスク氏の新党が連動すれば、トランプ氏に異議を唱える動きが党内でもより鮮明になるだろう。(時事)
 
 ◇対中強硬派、主張抑える
 欧州外交問題評議会のマイダ・ルガ上級政策研究員の話 「抑制主義者」も「優先主義者」も、米国の世界規模での軍事展開を縮小する必要があるという認識では一致している。いずれも欧州諸国やアジアの裕福な国々が負担の共有だけでなく、より多くの責任を負うべきだと考える。
 抑制主義者は、欧州での(軍事的)プレゼンスを減らす一方、資源を国内に投入し、国境問題や移民対策、インフラ整備などに振り向けるべきだと主張する。優先主義者は中国の台湾侵攻に備え、インド太平洋での抑止力強化が必要だとの見方を持つ。
 第2次トランプ政権発足当初は、インド太平洋や台湾を重視する議会超党派の合意もあり、優先主義者が主導的な役割を果たすと考えられていた。だが、トランプ氏は中国とのディール(取引)を望んでおり、軍事的対立につながるような抑止力強化といった議論を避けている。コルビー国防次官ら対中強硬派は表向き、その主張や表現を抑えなければならなかっただろう。
 トランプ氏は一つの問題に長期間集中し、取り組める人物ではない。欧州、アジアの同盟・友好国は抑制・優先主義者の閣僚や高官の存在を念頭に、あらゆるレベルで米国との協力を進める必要がある。(ワシントン時事)。 

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欧州外交問題評議会のマイダ・ルガ上級政策研究員(同評議会提供)
欧州外交問題評議会のマイダ・ルガ上級政策研究員(同評議会提供)

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