イスラエル、ガザ地元勢力と連携=「ハマス後」視野、情勢混乱に拍車も 2025年07月22日 14時02分

【カイロ時事】パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスの掃討作戦を続けるイスラエルは最近、ガザ各地の地元勢力と水面下で連携を進めている。ハマスの影響力を排除した上での戦後統治を見据えた動きだが、各勢力が広く住民の支持を得られるかは不透明で、かえって情勢混乱に拍車が掛かる恐れもある。
イスラエルのメディアによれば、同国軍は今月時点でガザの少なくとも三つの勢力と協力関係にある。北部ガザ市一帯の有力部族、南部ハンユニスを拠点とする民兵組織、最南部ラファの部族主体の武装集団だ。このうち特に注目されるのは、多くの避難民が滞在し、イスラエルが住民を事実上隔離する「人道都市」設置も視野に入れるラファで活動する勢力だ。
ラファの武装集団は「人民部隊」と自称し、過去に麻薬密輸や支援物資略奪に手を染めていたとされるヤセル・アブシャバブ氏が率いる。現在は米・イスラエルが主導する住民への物資配給に協力し、配給所付近で多発する銃撃への関与も疑われる。
人民部隊の関係者は時事通信の取材に応じ、同部隊について、ハマスが2023年10月に行ったイスラエル奇襲によって引き起こされたイスラエルの大規模軍事作戦という「惨劇」の中から生まれた草の根の義賊のような存在だと説明。「ハマスのテロから住民を守り、支援物資の輸送を警備している」と主張した。イスラエルとハマスが停戦で合意しても、当面は「混乱を防ぐため」活動を続ける意向を示した。
一方、ガザ市とハンユニスの2勢力は、07年にハマスによってガザから駆逐されたパレスチナ主流派組織ファタハと結び付きがあるという。
米シンクタンク「ワシントン近東政策研究所」のナオミ・ノイマン客員研究員は、ガザ統治での地元勢力との連携について、ハマスの軍事的な影響力排除などで一定の利点があると分析。ただ、長期的には「ガザ社会の内紛を加速させかねない」と指摘し、各勢力が暴走しないよう関係各国が監視、管理する必要があると訴えた。